奥歯のセラミック治療
奥歯の虫小さい場合はコンポジットレジンという材料を直接詰めて治療をしますが、虫歯が大きい場合は強度の問題からつめもの(インレー)やかぶせもの(クラウン)で修復必要があります。つめもの(インレー)やかぶせもの(クラウン)には保険治療と自由診療の2つ選択肢があります。条件を満たせば保険でも白くすることはできますが、両者には費用だけではなく精度や見た目、長期安定性などの部分で大きな違いがあります。
目次
01.インレーとクラウンの違い
むし歯が広範囲にわたる場合、コンポジットレジンという白い材料を直接詰める方法(直接修復といいます)では強度不足となるため、形を整えて型取りをし、金属やセラミックで修復する方法(間接修復といいます)が推奨されます。
歯の一部を保存して部分的に修復するものをインレー(つめもの)とよび、歯の全体を削って全体を修復するものをクラウン(かぶせもの)とよびます。
インレーにするか、クラウンにするかは、健全な歯の部分がどれだけ残っているかによって歯科医師が判断します。健全な歯の部分が多く残っている場合はインレーが適応となりますが、健全な部分が少ない場合は残した歯の部分が欠けてしまうリスクがあるため、クラウンになります。また、むし歯が大きく、神経を取らなければいけないような場合は、神経を取った後に歯がもろくなりやすいためクラウンで修復するのが一般的です。
種類 | 写真 | 修復の方法 | 適応 |
---|---|---|---|
インレー | 部分的につめて修復 | 健全な歯が多く残っている場合 | |
クラウン | 全体的にかぶせて修復 | 健全な歯が残っていない・強度的に不安な場合 |
02.保険治療と自由診療の比較
i インレー
保険診療でインレー修復を行う場合、すべての部位で金銀パラジウム合金と呼ばれる銀色の金属で修復することになります。(写真3)
一方、自費診療の場合、金(ゴールド)・ハイブリッドセラミック・ジルコニアなどいくつかの材料による修復が可能です。
一方、自費診療の場合、金(ゴールド)・ハイブリッドセラミック・ジルコニアなどいくつかの材料による修復が可能です。
ii クラウン
保険診療でクラウン修復を行う場合、一部は金銀パラジウム合金と呼ばれる銀色の金属(メタルクラウン)で修復することになりますが、一定の条件を満たせば奥歯でもCAD/CAMクラウンと呼ばれる白い材料で修復することが可能です。
保険のクラウンの種類 | 適応部位 |
---|---|
メタルクラウン | ・上顎の第1・2大臼歯(上顎6番・7番) ・下顎の第2大臼歯(下顎7番) |
CAD/CAMクラウン | ・上下顎の第1・2小臼歯Z(上下の4番・5番) ・下顎の第1大臼歯(下顎6番)→ただし、上下顎両側の第2大臼歯が全て残っている場合に限る |
一方、自費診療の場合、金(ゴールド)・ハイブリッドセラミック・ジルコニアなどいくつかの材料による修復が可能です。
03.各材料の特徴と適応
i.金銀パラジウム合金(保険)
金銀パラジウムとは、歯科において古くから使用されてきた合金で 金が12%、パラジウムが20%、銀が50%前後、銅が20%前後、その他インジウムなど数%が含まれています。 この金銀パラジウム合金の特徴は、貴金属である金・銀・パラジウムと卑金属である銅やインジウムなどを混ぜて作られている点です。貴金属と卑金属の違いは科学的にイオン化傾向に違いがあり、簡単に言うと「卑金属の方が腐食しやすい」ということになります。したがって、金銀パラジウムは長期的に見ると、常に水分がある口の中で容易に腐食を起こし、卑金属イオンが体内に取り込まれてしまうといった問題があります。金属アレルギーのある人では、この金銀パラジウム合金に含まれる金属によって口の中の粘膜に炎症が起きることがあります。また色は銀色で白い歯との違いがはっきりしており、審美性という点では非常に低く、近年では問題がないインレーやクラウンでも審美性の観点からセミラックに交換する人が増えています。このような事態から、当院では推奨しておりません。ii.金(ゴールド)(自費)
金も金銀パラジウム合金と同様に、長い間歯科治療で使用されてきた金属の一つで、セラミック材料が登場するまでは、歯科における自費の材料といえばこの金が主流でした。金は、イオン化傾向の低い貴金属のため、腐食を起こしにくく長期に渡って口の中で安定した状態を保つことがもっとも大きな特徴です。また、歯に近い熱膨張率や展延性を有しているため、非常に自分の歯との馴染みが良いのが特徴です。一方で、やはり金属であるため、見た目の問題から最近では使用しない歯科医院が増えています。当院では、金は審美性の問題から原則的には使用しておりません。iii.ハイブリッドセラミック(保険・自費)
ハイブリッドセミラックとは比較的新しい材料で、レジンと呼ばれる有機質(レジン)と無機質(セラミックなどのフィラー)の複合材料であるため、“ハイブリッド”とい名称が付けられています。レジン自体はむし歯を削った部分に直接詰めるダイレクトボンディング治療で使用されており、このレジンにセラミックなどの無機材料を混ざることで強度が増し、間接的修復のインレー・クラウンに使用できるようになっています。近年、保険治療でも一部奥歯に適用されるようなったCAD/CAMクラウンは、このハイブリッドセラミックの材料が用いられています。 見た目が歯と同じように白いため目立ちにくく、またセラミックと比べると比較的安価であるというのが最大の特徴ですが、一方で、材質的には強度が低く、吸水による膨張によって寸法も変化するため、適合精度が悪く、長期にわたって口の中で安定するという点では他の材料よりは劣ります。また、プラーク(汚れ)も非常に付着しやすいのが大きな欠点です。そのため、数年もしないうちに劣化し、むし歯が非常に再発しやすいため、当院では扱っておりません。iv.e.max(二ケイ酸リチウム)(自費)
二ケイ酸リチウムという単一のセラミック材料から作られており、透明度が高く色調再現性が高いのが特徴です。ケイ素が含まれているため、自分の歯と接着し、むし歯になりやすいのも大きな特徴の一つです。フルジルコニアと比較し、やや強度に劣るため前歯や小臼歯のみが適応となります。当院ではフルジルコニアの方が総合的に優れるため、この材料は扱っておりません。v.フルジルコニア(自費)
ジルコニアは比較的最近登場した新しい材料で、厳密にはジルコニウムという金属を酸化させた酸化ジルコニウムにイットリアなどを加えて安定化したものが歯科で使用されている材料になります。ブロックから削り出した後に焼結して作製するため、従来のセラミックよりも強度に優れ金属と同じくらいの硬さを有するのが特徴です。セラミックの表面に色づけすることによって、審美性も良好で、奥歯のインレーやクラウンにはもっとも適した材料と言えるでしょう。当院では、日本でもトップクラスの技工所と連携し、できるだけ強度があり審美性の高いジルコニアインレー・クラウンを提供しています。
スタンダード | プレミアム | |
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審美性 | ◯ | ◎ |
保証 | なし | 5年保証 |
材料 | 審美性 | 強度 | むし歯・ 歯周病の なりにくさ |
価格 |
---|---|---|---|---|
金銀 パラジウム |
× | ◎ | × | 保険で5,000~10,000円 |
金 (ゴールド) |
× | ◎ | ◯ | 当院では扱っておりませんが、 一般的に50,000~100,000円 |
ハイブリッド セラミック |
◯ | △ | △ | 当院では扱っておりませんが、 一般的には15,000~50,000円位のようです。 |
e.max (二ケイ酸 リチウム) |
◎ | × | ◎ | 当院では扱っておりませんが、 一般的には35,000~60,000円位のようです。 |
スタンダード ジルコニア |
○ | ◎ | ◎ | インレー:49,500円(税込) |
プレミアム ジルコニア |
◎ | ◎ | ◎ | インレー:88,000円(税込) クラウン: 臼歯132,000円(税込) 前歯165,000円(税込) |
04.治療の流れ
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虫歯の除去神経が生きている歯の場合、麻酔をしてむし歯や古い金属を除去します。
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裏層むし歯で削った部分をレジンで埋め立てます。
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形成インレーまたはクラウンのために形を整え削ります。
(むし歯が深い場合はここで仮づめをして様子をみることがあります。) -
デジタル印象麻酔をし歯と歯ぐきの間に圧排糸を挿入し、口腔内スキャナによる印象を行います。
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シェードテイク歯の色を記録するための写真を撮ります。
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仮封仮のふたまたは仮歯を装着し、この日の治療終了です。
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完成2回目の来院時にインレー・クラウンを装着します。
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メンテナンス3ヶ月に1度のメンテナンスを推奨しています。
保険診療と自由診療では、型取りの方法・製作方法が異なるため精度が異なります。
保険治療 | 自由診療 | |
---|---|---|
型取り | 印象材と呼ばれる粘土のような材料で型取りを行います。 | 口腔内スキャナと呼ばれる最新の方法で型取りをおこなうため、不快感がありません。 |
製作方法 | 印象材に石膏を流し、ワックスアップを行い、金属で鋳造するという大変古典的な方法(大仏を作る方法と同じ)で製作するため、精度が良くありません。結果として、歯とクラウンに隙間ができ、虫歯や歯周病になりやすくなります。 | 口腔内スキャナで得られたデータは直接技工所に送られ、コンピュータ上でデザインされ、機械によってセラミックブロックから削り出し加工されるため、非常に精度が高いクラウンが製作されます。 |
装着時の調整 | 精度が低いため、調整に時間がかかります。 | 精度が高いため、調整に時間がかかりません。 |
05.治療期間
来院回数:2〜3回
治療期間:約2週間〜1ヶ月
治療期間:約2週間〜1ヶ月
06.基本的な治療費用
インレー | クラウン | |
---|---|---|
金銀パラジウム | 保険診療におけるメタル修復は 当院では推奨しておりません。 |
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スタンダードジルコニア | 49,500円(税込) | |
プレミアムジルコニア | 88,000円(税込) | 臼歯 132,000円 前歯165,000円(税込) |
*上記費用には、デジタル印象・試適・装着の費用が含まれます。
*上記とは別途、再診料が毎回2,200円(税込)かかります。
*古い被せ物の除去、根の治療、土台の作製が必要な場合は別途費用がかかります。
07.付加的な治療オプションと費用
i むし歯の除去 | 保険適用範囲内 | ||||||||
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ii 部分断髄 | MTAセメント ¥36,300(税込) | ||||||||
iii 古い被せ物の除去 | 保険適用範囲内 | ||||||||
iv 根の治療のやり直し |
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v 土台(ファイバーポスト)のみのやり直し | ¥27,500(税込) | ||||||||
vi 歯冠長延長術(歯の高さが十分に確保できな場合の処置) | ¥33,000(税込) | ||||||||
vii 仮歯 | ¥5,500(税込) |
08.当院での治療を進める理由
- 必ず仮歯を作製するため、見た目に支障をきたすようなことがないよう、最大限努めます。
- できるだけ神経を残すように努めます。
- 型取りの際に、圧排糸と呼ばれる糸を歯と歯ぐきの間に挿入することで、
できるだけ精密な型取りを目指します。 - 最先端の口腔内スキャナを取りいれることで、型取りの不快感なくすことが可能となりました。
- 当院ではメタルフリーを目指しており、自由診療における材料に金属を使用しないため、
金属アレルギーや金属の腐食による身体への悪影響のリスクを限りなくゼロにしています。 - 世界最高峰レベルの技工所と提携しているため、見た目も機能も必ず満足していただける
セラミッククラウンを提供しています。 - フルジルコニアによるセラミック修復には5年保証を設けています。