超難症例にも対応可能な骨造成テクニック

上顎の奥歯で骨がない場合の骨造成〜上顎洞底挙上術〜
上顎の奥歯のすぐ上には、副鼻腔の一つである上顎洞という空洞があります。この上顎洞までの骨量が不足している場合は、上顎洞底挙上術という骨造成方法で骨を増やすことが可能です。

目次

01.概要

上顎の奥歯で骨がない場合の骨造成方法には大きく分けて2つあり、既存骨の量(現状での骨の量)によって適応が変わります。
通常、インプラントの長さは約8~10mm前後のものを用います。そのため、既存骨の高さが10mm以上ある場合は、骨造成を行う必要はなく、そのままインプラントを埋入することが可能です。しかしながら、既存骨量が8mmに満たない場合は、上顎洞の底部にある粘膜(上顎洞底粘膜:シュナイダー膜ともいう)を挙上しスペースを作り、そこに骨造成をすることで骨の高さを増やす処置、すなわち上顎洞底挙上術が必要となるのです。

02.術式の適応と利点・欠点

上顎洞底挙上術には“ソケットリフト”と“サイナスリフト”という2つの術式があり、既存骨の量(現状での骨の量)によって適応が変わります。

i ソケットリフト

ソケットリフトは主に残存骨量が5mm以上ある場合に適用されます。インプラントを埋入する穴から、オステオトームと呼ばれる器具を挿入し、上方に槌打することで骨ごと上顎洞底を挙上する方法です。挙上したスペースに人工骨を填入した後に、インプラントを埋入します。インプラント埋入後は2〜3ヶ月ほど待ち、上部構造を製作することが可能です。
ソケットリフトのメリット・デメリット
メリット
  • インプラントを埋入する穴から骨造成をおこなうため、低侵襲である
  • インプラントを同時に埋入が可能
  • 手術時間が短い
  • 高い治療技術を必要としない
デメリット
  • 盲目的な処置であるため、上顎洞底粘膜に
  • 穿孔しても気づかない恐れがある
  • 挙上できる範囲、高さが限られている
  • 挙上する操作が頭に響き不快感を生じる

ⅱ サイナスリフト

サイナスリフトは主に、既存骨量が5mm未満の場合に適用されます。骨量が3〜5mmの場合はサイナスリフトと同時にインプラントを埋入することが可能ですが、骨量が3mm未満でインプラントを固定するだけの骨の厚みがない場合はサイナスリフトのみを行い、インプラント埋入するためには約6ヶ月待つ必要があります。
ソケットリフトがインプラントを埋入する穴から槌打したのに対して、サイナスリフトでは上顎の側面から穴を開け、そこから小さなスプーンのような器具で直接上顎洞底粘膜を剥離・挙上していきます。挙上したスペースに人工骨を移植し、もともとの既存骨が3mm以上あればインプラントの埋入を行います。
サイナスリフトのメリット・デメリット
メリット
  • 明視野で行うことができるため安全
  • 挙上できる範囲、高さに制限がない
  • 挙上する操作に不快感がない
  • 複数のインプラントに対応できる
デメリット
  • インプラントを埋入する穴とは別に穴を開ける必要があり侵襲が大きい
  • 手術時間が長い
  • 高い技術と経験が必要である
  • 術後に腫れや内出血を伴うことがある

03.治療のリスク

上顎洞底挙上術は、4つある副鼻腔の1つである上顎洞という空洞を囲む粘膜を挙上する手術です。この上顎洞は、健常な人ではただの空洞であり、空気が入っているだけです。しかし、いわゆる蓄膿症や鼻炎の人は、粘膜が肥厚し、場合によっては空洞の中に膿や粘液が貯留している場合があります。このように副鼻腔が病的な状態のまま、上顎洞底挙上術を行うと移植した人工骨の感染のリスクが非常に高くなります。また、感染が波及すると重度の上顎洞炎になり、感染した人工骨を除去する処置をしなければなりません。
したがって、術前の耳鼻科的な問診が不可欠であり、上顎洞内に病変が認められる場合は、インプラント治療に先立って上顎洞の治療を優先する必要あります。
また、ソケットリフト・サイナスリフトともに、術中に上顎洞底粘膜が破れてしまうリスクがあります。これは、術者の技術や経験に依存することが多いリスクですが、どちらも気づいた場合にはコラーゲン膜を設置するなどして、リカバリーを行います。あまりに穴が大きくなってしまった場合には、骨造成自体を断念することもあります。
サイナスリフトでは上顎骨の側面より穴をあけますが、その穴の部分を後上歯槽動脈という血管が走行している場合あります。その血管を損傷すると大出血につながることもあり、十分に注意する必要があります。

04.手術について

手術は入院など必要ですか?
日帰り手術になりますので、入院などは必要ありません。静脈内鎮静法を行う場合は、少し休んでからお帰り頂きます。
手術時間はどのくらいですか?
通常のインプラント埋入に加え、ソケットリフトでは+約15分 サイナスリフト+約30分程度かかります。
手術が怖いです
手術は局所麻酔で行いますので、術中に痛みを感じることは基本的にはありません。もし手術に対して怖いというイメージが強い場合は、静脈内鎮静法をお勧めしています。全身麻酔ではないのですが、少しぼーっとした状態になり、大変リラックスした状態で手術中を過ごすことが可能です。
術後、痛みや腫れはありますか?
歯ぐきを切開し、骨に穴を開ける手術なので、痛みは当日・翌日がピーク、遅れて術後2~3日後に腫れることがあります。痛みに関しては、痛み止めを飲んでも効かないという痛みではありません。
上顎洞底挙上術の場合、目の下まで腫れたり、場合によっては内出血のような青アザができたりする場合があります通常、5〜7日後くらいから腫れや痛みは引いていきますが、内出血は1~2週間消えないことがあるので、人前に出たり旅行に行ったりという予定は入れないことをおすすめします。
術後の注意事項はありますか?
手術当日は、お酒・運動・お風呂につかる(シャワーは可)など血の巡りがよくなるような行動は控えていただきます。翌日からは普段通り生活していただいて構いませんが、あまり激しい運動などは2~3日控えた方が良いでしょう。手術をした部位でものを強く噛んだり、歯磨きは控えてください。また、手術直後は今まで使用していた入れ歯が入らなくなります。数日間、おかゆなど柔らかいものを召し上がっていただくようにしています。
また、強く鼻をかんだり、ストローで強く吸引したり、鼻に圧がかかるようなことは避けてください。
術後の予定を教えてください。
当院では、鎮痛剤と抗生剤と一緒にうがい薬もお出ししていますので、翌日に消毒などで来院して頂く必要はありません。2週間後を目安に抜糸で来院していただきます。その後はインプラントと骨が結合するまで待つだけとなりますので、その次の来院は3~6ヶ月後の上部構造(歯の部分)のための型取りまで来院して頂く必要はありません。

05.費用

i 上顎道程挙上術 ソケットリフト 143,000円(税込)+人工骨の費用
ii 上顎洞底挙上術 サイナスリフト 352,000円(税込)+人工骨の費用
■上顎に1本のインプラント埋入とソケットリフトをおこなった場合
埋入手術 352,000円/本
(術前後のCT撮影・分析・術前のクリーニング・術後の薬剤などが含まれます)
ソケットリフト 143,000円
上部構造(フルジルコニアクラウン) 176,000円
合計 671,000円
■(例2)上顎に2本のインプラント埋入とサイナスリフトをおこなった場合
埋入手術 352,000円 x 2
(術前後のCT撮影・分析・術前のクリーニング・術後の薬剤などが含まれます)
サイナスリフト 352,000円
上部構造(フルジルコニアクラウン) 176,000円 x 2
合計 1,408,000円
*価格はすべて税込です。
*仮歯をご希望の方は+¥55,000/本がかかります。
*上記とは別途、再診料が毎回¥2,200(税込)かかります。
*上記費用には骨補填材およびメンブレンの材料代が含まれます。

06.三軒茶屋マルオ歯科のインプラント治療の特徴

  • 最新の歯科用CTを導入しているため、最低限の被曝でレントゲン検査を受けていただけます。
  • 全ての手術に対して、最新のシミュレーションソフトを用いて、
    インプラント手術計画を立案しているため、安心・安全な手術を保証いたします。
  • インプラント専門医による迅速かつ正確な手術をおこなうため、
    患者さんの手術の不安を最小限に抑えることが可能です。
  • インプラント治療専門医として、
    難症例や他院でのトラブル症例を多く経験していおり、豊富な経験があります。
  • 最新のエビデンス(医学的根拠)に基づいて、治療をおこなっているため、
    他院よりも治療期間を短縮しておこなうことが可能です。