セラミック矯正

01.セラミック矯正とは

セラミック矯正とは、歯並びを改善する手段の1つとして、某有名美容外科が使い始めた言葉で、医学用語としては存在しません。また、歯学部あるいは歯科の学問において、「セラミック矯正」という分野は存在しませんし、長期的な治療結果に対するエビデンス(医学的根拠となる科学的な研究結果)があるわけではありません。
具体的な処置方法は、不揃いな歯並びを矯正治療による歯の移動で改善するのではなく、健康な歯を小さく削ってセラミックの被せ物で見た目だけを改善する方法です。しかし、健康な歯を削ることのデメリットはあまりに多く、歯科医療に携わる人からすると治療と呼ぶには程遠く、「歯の整形」という呼び方が適切と言えるでしょう。

02.セラミック矯正のメリット

セラミック矯正のメリットは、「期間が短い」ということに尽きます。通常、歯並びを改善するためには矯正治療が第一選択ですが、治療期間が長くなることがデメリットの1つとして挙げられます。(歯並びの状態や個人差にもよりますが6ヶ月〜3年くらいの幅があります)そのため、矯正装置をつけられない芸能関係の方や、結婚式を目前に控えている方などが、矯正治療以外の方法で、見た目を手っ取り早く改善する方法として、一般的な歯科ではなく美容整形のクリニックの歯科部門が考案した処置方法です。短期間で見た目自体は改善されますが、お口全体を含めた治療計画をしっかりと立案しないとその後の歯や噛み合わせが狂ってしまい、数年後に大がかりな再治療を余儀なくされることがありますので、十分注意が必要です。

03.こんなに多いセラミック矯正のデメリット

i 健康の歯を削る

歯は一番外側にエナメル質という硬い成分で覆われています。その下には一番内側にある神経(歯髄)を囲む象牙質という成分があります。歯を多く削るとこの象牙質が露出し、歯髄に近接するため冷たいものや熱いものでしみやすくなります。
また、象牙質はエナメル質に比べて柔らかいため、虫歯になりやすい性質を持っています。したがって、セラミック矯正で被せたセラミッククラウンの精度が悪いと、隙間の部分から虫歯になってしまい、あとで再度治療をしなければいけなくなってしまいます。

ii 神経を抜く場合がある

健康な歯を削りすぎてしまうと、場合によってはなにもしなくても歯が痛みだすこともあり、結果として神経を取らなくてはいけなくなってしまうことがあります。特に、セラミック矯正のように、本来の歯が生えている向きをセラミックで大きく変えようとすると、必然的に歯を削る量が増えるため、神経を取らなければいけないことが多くあります。
歯髄には神経だけではなく、歯の栄養を供給する血管も含まれるため、神経をとってしまうと、歯の栄養を供給していた血管も取り除くことになり、歯から水分が失われ、結果的に脆く割れやすくなります。歯が割れてしまうと、残念ながら歯を抜かなくてはいけません。神経を取ると、最終的にはその歯が抜歯になる可能性が格段に上がります。虫歯などなら仕方ありませんが、健康な歯を削って神経までとってしまうのはあまりにデメリットが多いため、できるだけ神経を残す治療をお勧めいたします。
また、神経をとったり、神経が死ぬと、歯の色が黒っぽくなってしまうのは、このためです。

iii 根の治療の先で炎症を起こす可能性がある

神経をとった場合、根の治療をおこない、最終的に根の神経があった部分に根充剤と呼ばれる薬剤を詰めて無菌化します。しかし、根の治療がしっかりと無菌化した状態で行われなかったり、根充剤が緊密に充填されていなかったりした場合、根の中には細菌が残留してしまい、歯根の先端部分で炎症を起こしてしまうことがあります。
根の治療を行う際には、できるだけ無菌的な環境で行うためにラバーダムというゴムのシートで治療する歯を隔離することが重要です。ラバーダムをしないで、根管治療を行うと根の先の炎症を後に起こしやすいため、しっかりと根の治療をおこなっている歯科医院で治療を受けることが重要です。

iv 根が割れて歯を抜かなくではいけなくなる

神経を抜いてしまうと歯には栄養供給が行かなくなり根の治療を何度も繰り返したり、神経をとった歯の根に装着した土台が太く長いと、歯の根が割れてしまう可能性が非常に高くなります。
根が割れてしまうと、その隙間から細菌が侵入し炎症を起こします。場合によっては、歯茎が腫れ、痛みを伴うこともあります。
根が割れてしまった場合の治療はなく、残念ながら抜歯をしなければいけません。抜歯のあとはインプラントや、再度セラミックのブリッジをやり直す必要があり、再び長い治療期間や高額な治療費がかかることがあります。

v 1本の歯にトラブルがあったら全部外さなくてはいけなくなる

セラミック矯正の多くは、複数のセラミックの歯を連結して製作しています。しかし、このように歯を連結してしまうと、1本の歯にトラブルがあった時に、全て壊してはずなさなくてはいけなくなり、被せ物の部分は全て使えなくなってしまいます。そのため、神経を抜く場合などは根の治療をしっかりとおこなう必要があります。見た目の仕上がりだけではなく、その前の治療もしっかりとおこなってくれる歯科医院を選びましょう。

vi 年齢とともに歯茎が退縮し黒ずみが目立つ

歯茎は年齢と共に、退縮します(上の歯茎は上がり、下の歯茎は下がります)。セラミックで被せた部分の境目の部分が目立つようになり、土台の部分やセラミック、使用したセメントなどによっては、黒ずみが目立つことがあります。自分の歯では退縮してもそのように境目が目立つことはありません。できるだけ健康な歯を削らないことが一番です。

vii 噛み合わせを考慮しないと前歯も奥歯もダメになる

セラミック矯正では、もともとよくない歯並びを被せもので無理やり矯正するものです。しかし、歯並びは、良くも悪くも上下で噛み合っていますので、上だけ歯並びを整えると、下の歯と良く噛まなくなってしまいます。また、内側に入っている歯を無理やり外側に出したりすることで、本来生えていた方向と違う方向に力が加わるので、根が割れてしまうなどトラブルが起きる可能性があります。このように、お口全体の噛み合わせを考慮せずに、上の前歯だけを綺麗に並べることは、少なからず他の歯に支障が出る可能性が非常に高くなります。しっかりと噛み合わせを考慮した治療計画を立ててくれる歯科医師に相談しましょう。

04.開始前に要確認!セラミック矯正の落とし穴

i 見た目だけを改善するのは治療ではなく整形

現在美容外科などで行われているセラミック矯正の多くは、機能や噛み合わせを無視し、見た目だけを改善するものとなっています。矯正とは本来、機能や噛み合わせを改善する“治療”です。しかし、セラミック矯正は“治療”と呼ぶにはほど遠く、“歯の整形”とも言えるでしょう。

ii 一見安そうな治療費

セラミック矯正は矯正治療に比べると安い費用で見た目が改善できるという利点があります。しかし、長期的な観点からすると、一度削ってしまった歯は将来的に何らかのトラブルが起きる可能性があります。例えば、神経をとってしまった歯では、将来的に根が割れて抜歯になることもあり得ます。歯を抜いた後にインプラント治療などを選択した場合、治療費は高額となり、総合的に矯正治療をするよりも高額な治療費になる可能性もあります。治療費に関しては、自由診療で歯科医院によって様々です。ぜひ、複数の歯科医院を受診し、自分が一番納得するクリニックで治療を受けることをお勧めします。

iii 治療費一括前払いの罠

歯科医院によっては、治療開始時に治療費を一括払いする契約のところもあるようです。しかし、前払いする際には、必ず契約内容を確認し、特に返金の条件については十分に注意をしましょう。実際に、治療が進んだ後に、満足のいく結果が得られなくても、返金をしてくれないクリニックもあり、トラブルに発展しているケースも少なくありません。

iv 問われる治療の質

矯正や審美セラミックなどを含む前歯の審美修復治療は、歯科治療の中でも非常に複雑であり、難易度の高い治療です。最も重要なことは、患者さんとのコミュニケーションで、歯科医師と患者さんの両者が明確にゴールを共有することが不可欠です。なぜなら、歯科医師が良かれと思って設定したゴールが、必ずしも患者さんにとってベストとは限らないからです。 

次に重要なこととして、治療計画の立案が挙げられます。治療計画の立案のためには様々な治療オプションの引き出しを多数持っている必要があります。そのためには、豊富な経験や知識が不可欠となります。様々な治療オプションを組み合わせて、治療結果・予算・治療期間などを勘案して、最終的には患者さんに治療計画を選択していただくことが重要です。
某美容外科の歯科部門では、前歯の見た目改善にはセラミック矯正だけが選択肢のように取り扱われていますが、治療オプションは1つではありませんので、必ずセカンドオピニオンを受診するようにしましょう。

最後に重要なことは、言うまでもありませんが、高い技術です。審美エリアの治療は非常に難易度が高く、治療も複雑となります。しかしながら、歯学部における卒前教育ではほとんど学ぶ機会はありません。そのため、学会や勉強会・セミナーなどに積極的に参加し、治療技術を学び知識を増やすと当時に、十分な経験を積む必要があります。残念ながら卒業したばかりの若い歯科医師が、予知性のある(長期にわたってうまくいく)審美治療をできるとは到底思えません。歯科医師選びも慎重に行うことをお勧めします。

v 治療の保証の有無

これまで述べてきたように、セラミック矯正は処置後のトラブルが多い治療です。処置が完了した後に、神経が死んでしまって、根の先で炎症を起こしたり、被せ物が頻繁に取れてしまったり、最悪な場合はせっかく被せたセラミックを壊して治療をやり直す必要が出る場合もあります。
このように、後々治療のやり直しなどが生じた場合の保証についてもしっかりと説明し、同意書や見積書などに明記しているクリニックを選択するようにしましょう。

vi 返金対応の有無

セラミック矯正をおこなっている多く歯科医院が、治療開始時に前払いで治療費を請求しているようです。しかし、治療が進むにつれ、患者さんが自分の想定したものと異なる結果に進んでいることに気づき、治療の中断を申し出るケースも少なくありません。そのような場合に、しっかりと返金対応をしてくれるかの確認も重要です。当院では、治療途中で中断を希望したものの、返金対応してくれず、結果的に泣き寝入りしたという患者さんも何人か来院しています。必ず契約時に確認するようにしましょう。

05.セカンドオピニオンの受診を薦める理由

セカンドオピニオンを受けることは患者さんの権利です。特に矯正を含む審美に関わる治療は、卒前教育で学ぶことがほとんどないため、歯科医によって様々です。正直、私から見て非常にずさんな治療計画を平気で勧める歯科医師もいます。必ず審美治療はセカンドオピニオンを受けましょう。

06.セラミック矯正の代わりとなる治療法

セラミック矯正の代わりとなる治療法はきちんとした矯正治療が第一選択となります。矯正治療では時間がかかるというデメリットはありますが、なによりも自分の歯を健康な状態で保ったまま、歯並びや噛み合わせを改善すると言う点では、セラミック矯正に比べ圧倒的なメリットがあります。目立ちにくい裏側矯正やマウスピース矯正もありますので、矯正治療を専門に行う歯科医師がいる総合的な歯科医院で相談することをオススメします。

07.三軒茶屋マルオ歯科の審美修復治療の特徴

  • 三軒茶屋マルオ歯科では、セラミック矯正は
    もともと削ってある歯がある場合などを除いて、原則的にオススメしません。
  • 三軒茶屋マルオ歯科には、審美治療専門医・矯正治療を専門に行う歯科医師・根管治療専門医が在籍し、
    患者さんにとって最も良い方法を総合的に判断し、複数の治療計画を提案します。
  • 三軒茶屋マルオ歯科では、矯正治療やセラミック修復だけでなく、
    患者さんの口腔内に応じてインプラント治療や歯周形成外科など高度な外科治療も行っています。
  • 三軒茶屋マルオ歯科では、治療費について全額前払いしていただくことはありません。
    それぞれの治療を行なった際に、その治療費分をお支払いいただきます。
  • 三軒茶屋マルオ歯科のセラミック治療には5年間の保証があります。
  • 三軒茶屋マルオ歯科では、デンタルローン・クレジット分割払いにも対応しています。
  • 三軒茶屋マルオ歯科では、セカンドオピニオンも随時受け付けています。